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4度目の正直。百田尚樹の「海賊とよばれた男」が本屋大賞に


4/9に東京・港区の明治記念館で本屋大賞実行委員会の主催する「2013年 第10回本屋大賞」が発表され、本年度の大賞には百田尚樹氏(57)の「海賊とよばれた男」(講談社、上下巻)が選ばれました。この大賞は全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を選ぶというもので、全国の新刊本を扱っている書籍店の店員であれば登録して投票できることになっています。

今年で10回目を迎えた同賞は、長い歴史のある芥川賞や直木賞に匹敵する賞に成長してきており、翌4/10の朝日新聞でも大きく扱われています。大賞の選出にあたり、一次投票では全国463書店から598人の投票があり、ノミネート作品をすべて読んだ上で推薦理由と共にベスト3を投票する方式をとった二次投票では、263書店から307人の投票があったとの事です。

「作家になって7年。初めていただいた賞なので、本当にうれしい。直木賞なんかよりはるかに素晴らしい。」と授賞式に出席した百田氏は満面の笑みを見せつつも、「運が悪いことに4/12に村上春樹さんの本が発売される。もしかしたら受賞作品史上最も売り上げの悪い本になってしまうかもしれません。」と冗談交じりにコメントしていました。

会場には昨年「舟を編む」(光文社)で同大賞を受賞した三浦しをん氏が祝福に駆けつけ、「本当に硬派で熱い小説。この本を読んだ人は勇気や情熱を受け取れるんだと思うと本当に素晴らしい。」と絶賛していました。


この「海賊とよばれた男」は昨年7月に刊行され、上下巻で計80万部超のベストセラーになっています。日本人が自信を失っている中、「生きるすばらしさを伝えたい」と百田氏が使命感に駆られて、戦後の日本における石油の安定供給に尽力した人物である出光興産の創業者、出光佐三(1885~1981年)の生涯をモデルに、実在の事件「日章丸事件」に基づき石油会社の経営者である「国岡鐵造」の波乱の人生を描いたドキュメント小説です。




こちらは同小説の発売前の広告映像で、ストーリーの概要にも触れています。




こちらは音声のみですが、北野誠(54)が同作品について語っています。


執筆にあたって百田氏は、「この作品に半年かかってますが、その間に3回救急車で運ばれた。1回目に運ばれた時に、医者から「肝臓と胆のうが炎症を起こしている。一刻も早く手術しないとえらいことになる」と言われた。術後10日は安静にと言われたので、その10日がもったいないと、手術して1ヶ月くらいお腹から血を流しながら書きました。」と、自身の健康状態がギリギリだった事を告白していました。

百田氏が同大賞にノミネートされたのは今回で4度目の事で、これまでの実績は2009年に「ボックス!」(太田出版)で初めて5位に選ばれ、2011年は「錨を上げよ」(講談社)で4位、2012年は「プリズム」(幻冬舎)で10位、そして今回ついに1位を受賞しています。小説家としてのデビュー作は2006年発売の「永遠の0」(太田出版)で、これはV6の岡田准一が主演する同名作品として映画化が実現し、今年12月に公開される予定となっています。


今回の本屋大賞受賞作品のランキングは以下の通りです。

【 2013年 第10回本屋大賞受賞作品 】

 1位 : 「海賊とよばれた男」(百田尚樹) 
 2位 : 「64」(横山秀夫)
 3位 : 「楽園のカンヴァス」(原田マハ)
 4位 : 「きみはいい子」(中脇初枝)
 5位 : 「ふくわらい」(西加奈子)
 6位 : 「晴天の迷いクジラ」(窪美澄)
 7位 : 「ソロモンの偽証」(宮部みゆき)
 8位 : 「世界から猫が消えたなら」(川村元気)
 9位 : 「百年法」(山田宗樹)
10位 : 「屍者の帝国」(伊藤計劃、円城塔)
11位 : 「光圀伝」(冲方丁)


続いて、以下に過去9年の本屋大賞受賞作品をまとめます。

【 過去の本屋大賞受賞作品 】

2004年 : 「博士の愛した数式」(小川洋子)→ 映画化
2005年 : 「夜のピクニック」(恩田睦)→ 映画化
2006年 : 「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(リリー・フランキー)→ 映画化
2007年 : 「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子)→ ドラマ化
2008年 : 「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎)→ 映画化
2009年 : 「告白」(湊たかえ)→ 映画化                :  5位 「ボックス!」(百田尚樹)
2010年 : 「天地明察」(沖方丁)→ 映画化
2011年 : 「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉)→ ドラマ化 :  4位 「錨を上げよ」(百田尚樹)
2012年 : 「船を編む」(三浦しをん)→ 映画化             : 10位 「錨を上げよ」(百田尚樹)

いずれの作品も映画化、あるいはドラマ化されている事から、本作品もいずれ映像作品となる可能性は高いとみられています。これについて百田氏は、「いやいや、まだ何も…。まあ、賞を取ったばかりなので、この賞をきっかけに1人でも多くの人が読んでいただけたら嬉しい。ドラマ化になって、それで多くの人がこの男の生き方を知ってくれたら嬉しいと思います。」とコメントしています。


俳優の松方弘樹(70)は同作品の中で特に感動した部分として、「鐵造は思った。日本人がいるかぎり日本が亡ぶはずがない。日本には三千年の歴史がある。戦争に負けたからといって大国民の誇りを失ってはならない。すべてを失おうとも、日本人がいるかぎりこの国は必ずや立ち上がる日が来る」という主人公の国岡が会社再建を誓うシーンを挙げており、「現代の日本人も見習うべきだ」とコメントしています。

書評家の大森望(52)は同作品の受賞の理由について、「すごく元気が出る小説で、格好良すぎるくらい格好良い。いきなり主人公が60歳くらいから始まるんですけど、おじいちゃんなのに格好良いヒーローが日本にいたんだなというので、今はアベノミクスで景気が良くなっていくタイミングで受賞する作品としてはぴったり。元気が出る小説です。」とコメントしています。


百田氏は小説家としてデビューしたのが7年前の50歳の時と遅咲きで、素人からの依頼に探偵が体を張って調査するという関西で圧倒的な人気を誇るテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」に25年前の立ち上げから参加し、その他にも多くのバラエティー番組を手がけた放送作家という経歴の持ち主です。

同番組にレギュラー出演している松村邦洋(45)は、「百田さん、おめでとうございます。」 また金曜日お世話になりますってこれ、楽屋で言えばいいんですけど、良かったと思います。」と祝福し、百田氏については、「面白い事をずっと追求する人ですね。VTRを見ながらいつもチェックしている様な、何か面白い関西人の方ですね。海坊主みたいな頭ですけどね。」 と余り中身の無いコメントをしています。w

百田氏自身が語る小説家の道へと進んだ理由は、「自分の人生の50年を振り返った時に、テレビの放送作家で楽しくおもしろおかしく生きてきたんですけど、何かこれっていう仕事したかなって深く反省して、次の50年は、次の人生は違うことするのかなと思って、それでまだやったことない小説をやってみようと思ったんです。」というものでした。


50歳にして小説の世界へ飛び込み、既に数多くのヒット作を生んだ百田氏が執筆する際には必ず心がけている事があるそうです。それは、昨年3月に百田氏がテレビ番組、「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」(日本テレビ系)に出演した際に、「読んでくれた人が「元気になる」あるいは「生きるって、いいな」と思ってくれる小説を書きたいと思います。世の中の嫌さを描いたとか、そんなのだけは嫌なんですよ。やっぱり人生は良いなと…。」という事で、更に放送作家らしい目線として、「カメラがどこにいるのかなと、風景を書く時もこれは誰が見てんねや。その風景は誰がどっから見てるんやっていう…」という様に、常に頭の中に映像を意識しながら書いているという事でした。

本が好きでこれまでずっと読んできた百田氏は、ある時期から本屋に面白い本が無いと思い始めて以来本を読まなくなり、そこで自分が書くしかないなと決意したそうです。そのリサーチ能力の高さや、映像を意識して小説を書くという上記の独自のスタイルが読者にとっては分かりやすい情景となる事から、過去に3作品が同大賞にランクインしている事もうなづけます。

特に女性の読者層からは、「硬派な歴史小説と身構えていたのに、読みやすくてどんどん引きこまれていく。」という反響が多かった様です。同作品は今回大賞の受賞が決定した事で、既に32万部の増刷が決まりました。現時点では41万部の売り上げを突破しており、これまでの大賞受賞作が100万部を突破している事から、同作品もそれ以上の売り上げに達する超ベストセラー作品となる可能性は高いとみられています。


同賞の受賞作には出版業界だけでなく映像業界も注目している理由として、映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」や、「船を編む」をプロデュースした映画プロデューサーの孫家邦(52)は、「現役書店員が選ぶので「目線が等身大」で一般の人にも親しみやすい。男女や年齢を問わず受け入れられる作品が多い。」とコメントしています。上記の大森望もこの事について、「誰が読んでも面白いものを選ぶというのが根底にあり、起伏のあるストーリーや面白いキャラクターが多いので映像化しやすい。」とコメントしています。

百田氏にとっては4度目にして成し得た悲願の大賞受賞であり、自身の健康を犠牲にしてまで書き上げた同作品に対する思い入れは深い筈でしょう。今回の同賞受賞作品の発表を機に、全国の書店ではフェアが実施されるもようです。恐らくドラマ化や映画化の話もいずれ持ち上がる日が来ると思われますので、今後も話題性が高まるに違いありません。












   


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